大動脈瘤 -ご紹介のタイミングについて-

背景

当院では大動脈疾患の手術を多く手がけており、治療成績と技術は日々向上しています。必要な精密検査を行い、十分に検討された予定手術では開胸手術、血管内手術ともに手術リスクはかなり下げられております。しかし、破裂や解離発生後病院に辿り着く前に死亡してしまうことや、緊急手術を受けても救命困難な症例や術後合併症を伴う症例がゼロではありません。

一般的に大動脈瘤径が大きいほど破裂・解離のリスクが上昇することは分かっていますので、「大動脈瘤をいつ専門医に紹介するか」は患者さんの予後を大きく左右します。

では具体的に、どの部位の大動脈瘤は何mmから専門医に紹介するのが良いのでしょうか?ご家族で大動脈解離を起こした方がいる患者さまはどうでしょうか?ずっとエコー評価を継続していて良いのでしょうか?ガイドラインを読んでもかなり複雑で、明確な基準は分かりにくいです。実際、多くの医師が不安を感じながら診療にあたっていることが多いと思います。

湘南藤沢徳洲会病院 心臓血管外科では、地域の先生方と協力し、より安全に、計画的に治療へつなげるため>明確な紹介基準を設定しましたのでご紹介します。

基本方針

  • CTで45mmを超えたらご紹介ください。
  • エコーで40mmを超えたらCTでの精査を。

この2点を当院へのご紹介の目安としています。
「手術適応前」にご紹介いただくことで、計画的な術前評価・リスク説明・外来フォローが可能となります。

CTとエコーの測定差に注意

経胸壁心エコーは描出角度や測定部位の影響により、実際よりも小さく測定されることがあります。
そのため、過小評価によって治療のタイミングを逃してしまう可能性があります。

実際に、当科を受診された患者さんの中には、エコーで上行大動脈40mm → CTで50mmと判明し、手術適応となった症例もあります。

我々の経験では、胸部大動脈瘤では心エコーとCTで約10mmの差を認めることがあります。一方、腹部大動脈瘤では測定差が比較的小さい傾向にありますが、腹部大動脈瘤を有する患者さんでは胸部大動脈瘤や冠動脈疾患を合併していることもあり、一度は全身CTでの評価が望ましいと考えます。

したがって、エコーならば胸部大動脈も腹部大動脈も40mmに達した時点でCT撮影または心臓血管外科への紹介を検討していただくことが、破裂・解離の予防に極めて重要です。

部位別の紹介・手術適応基準

部位 当科での紹介目安 手術検討ライン 補足事項
基部・上行・弓部大動脈瘤 CT 45mm以上
(エコー40mm以上でCT)
50mm以上 遺伝性疾患(Marfanなど)は45mmから検討
下行・胸腹部大動脈瘤 CT 45mm以上 55mm以上 TEVARを含めた治療戦略を検討
腹部大動脈瘤 CT 45mm以上 50mm以上
(女性は45mm以上)
嚢状瘤は40mm手前から要相談
拡大速度 半年で5mm以上の拡大 サイズに関わらず手術介入を検討

ご紹介を検討いただく基準(まとめ)

  • CTで45mm以上
  • エコーで40mm以上(CT精査を推奨)
  • 家族歴・遺伝性疾患あり(Marfan症候群、Loeys-Dietz症候群、大動脈二尖弁など)
  • 半年で5mm以上の拡大
  • 症状あり(胸痛・背部痛・嗄声など)

「紹介=手術」ではありません。

手術適応かどうかは、我々が患者さまの年齢・体力・既往歴などを踏まえて総合的に判断いたします。超高齢の場合など症例によっては手術しないほうが良いと判断する場合もあります。そういった患者さまに対して、心臓外科医が直接状況を説明し、急変時の対応を明確にしておくことも大事な仕事の1つと考えております。
まずは「相談」や「念のための評価」という段階で、ぜひお気軽にご紹介ください。

地域連携体制

湘南藤沢徳洲会病院 心臓血管外科では、開胸手術・ステントグラフト治療(TEVAR/EVAR)など幅広い術式に対応し、もちろん解離・破裂などの緊急症例に24時間体制で対応しています。

また、CT撮影のみの紹介受診や術後の逆紹介にも対応しております。
ご不明な点があれば、当院地域連携室または当科までお気軽にご連絡ください。

メッセージ

CTで45mm、エコーで40mmを超えたら“湘南藤沢”へ

「迷ったら紹介」――その一歩が救命につながります。
湘南エリア全体で、大動脈疾患の患者さんを守る体制をともに築いていきましょう。

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