Marfan以外の結合組織疾患について
~ロイス・ディーツ症候群・エーラス・ダンロス症候群~

これらはいずれも、「結合組織(体を支える組織)」が生まれつき弱い遺伝性疾患です。

大動脈瘤や大動脈解離などの血管病変を起こしやすく、早期の診断と慎重な経過観察が重要な点は共通していますが、関係する遺伝子や現れる症状にはそれぞれ特徴的な違いがあります。

マルファン症候群(Marfan syndrome)

原因遺伝子:FBN1(フィブリリン-1)
主な影響部位:大動脈・骨格・眼

  • 背が高く、手足や指が長い(くもの巣様指)
  • 胸郭変形(鳩胸・漏斗胸)、側弯症
  • 水晶体脱臼などの眼の異常
  • 大動脈基部の拡大や解離

ポイント

骨や血管などの弾力を保つ「フィブリリン」が弱くなることで、骨格や目、心臓大動脈に特徴的な変化を生じます。
放置すると大動脈解離や破裂の危険があるため、定期的な心エコーやCTによるフォローが重要です。

ロイス・ディーツ症候群(Loeys-Dietz syndrome)

原因遺伝子:TGFBR1、TGFBR2、SMAD2、SMAD3、TGFB2、TGFB3 など
主な影響部位:血管・骨格・皮膚・顔貌

  • 大動脈や全身の動脈(脳動脈・内臓動脈など)の拡大・蛇行が特徴
  • 分岐口蓋垂(口蓋垂が二股に分かれる)、口蓋裂
  • 両眼隔離(目が離れている)などの顔貌
  • 胸郭変形、関節の柔らかさ
  • 皮膚がやわらかく、傷あとが目立ちやすい
  • 若年で動脈解離を起こすことがある

ポイント

マルファン症候群と似ていますが、水晶体脱臼が少なく、より若年で広範囲の血管に異常が出やすいことが特徴です。
全身の定期的な画像フォローと、場合によっては早めの外科的対応が推奨されます。

エーラス・ダンロス症候群(Ehlers-Danlos syndrome)

原因遺伝子:タイプにより異なる(COL3A1 など)
主な影響部位:皮膚・関節・血管

  • 皮膚がやわらかく、伸びやすい
  • 関節が非常に柔らかく、脱臼しやすい
  • 傷あとが広がりやすく、けがの治りが遅い
  • 血管型(vascular type)では血管破裂や腸管破裂を起こすことがある

ポイント

古典型・関節型・血管型など多数の型があります。
特に血管型では突然の血管破裂が致命的となることがあり、遺伝子検査と画像による慎重な経過観察が不可欠です。

3疾患の比較

項目 マルファン症候群 ロイス・ディーツ症候群 エーラス・ダンロス症候群(血管型)
主な原因遺伝子 FBN1 TGFBR1 / 2 など COL3A1 など
発症年齢 若年〜成人期 小児期〜若年期 小児期〜成人期
主な特徴 高身長・長い手足・眼の異常 顔貌・口蓋裂・血管蛇行 皮膚の伸展・関節過可動・血管脆弱
血管病変の特徴 大動脈基部が徐々に拡大 急速に拡大・蛇行 血管壁がもろく破裂のリスクあり
手術のタイミング 画像(CT・エコー)で判断 早期手術を検討 状況に応じ慎重に判断
主に関わる診療科 心臓外科・脊椎外科・内科など 心臓外科・脳外科・血管外科・内科など 心臓外科・外科・整形外科など

当院での取り組み

これら3つの疾患は共通する特徴を持ちますが、診断には専門的な知識と遺伝子検査が必要となることが多く、正確な診断と早期対応が非常に重要です。
放置してしまうと、ある日突然、大動脈解離や破裂を起こす危険があります。

一方で、早期に診断がつけば、内服治療によって大動脈拡大の進行を抑えられる可能性があります。
また、手術が必要となった場合でも、解離・破裂後の緊急手術ではなく、十分な検査と準備を行ったうえでの予定手術であれば、リスクを大きく軽減することができます。

当院には「Shonan Fujisawa Marfan Team」があり、 マルファン症候群はもちろん、ロイス・ディーツ症候群やエーラス・ダンロス症候群にも対応できる体制を整えています。 これらはいずれも全身に関わる疾患であるため、心臓外科医・脊椎外科医・循環器内科医・遺伝専門医・外科医が連携し、診断から治療、術後フォローまでを包括的に行うことで、患者さまの身体的・精神的負担を軽減できるよう努めています。

まずは心臓外科で大動脈と心臓の画像診断を行い、
必要に応じて他科と協力しながら、最も適した治療方針を検討します。

ご相談ください

  • ご家族に若年での大動脈疾患や突然死のある方
  • 上記の症状が当てはまる方
  • 「マルファン症候群ではない」と言われたが、他の結合組織疾患の可能性が心配な方

そのような方は、ぜひ一度心臓血管外科外来へご相談ください。

ご家族の方へ

ロイス・ディーツ症候群やエーラス・ダンロス症候群は遺伝性疾患であり、
ご家族にも同様の疾患が見つかることがあります。

当院では、患者さまだけでなくご家族全体をサポートする体制を整えています。
不安なことや気になることがありましたら、どうぞ遠慮なくご相談ください。

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